■サステナブル・ブランド国際会議(以下、SB)
米国のサステナブル・ライフ・メディア社が展開する国際会議で、グローバルで活躍するサステナビリティのリーダーが集まるコミュニティ・イベント。2021年度には12カ国で開催され、入場者数はグローバルで1.3万人を数える。日本では、2017年3月に初めて開催され、2023年2月には7回目が行われた。
■高校生特別ご招待プログラムStudent Ambassador(以下、SA)
2023年2月15日、サステナブル・ブランド国際会議2023東京・丸の内で、次世代育成プログラムとして「第3回 SB Student Ambassador 全国大会」が開催された。2022年の秋に行われた地域ブロック大会を経て全国115校中15校が招待され、岐阜高校の多和田芽依さん、安田美結さん、加藤あかねさん、佐藤菜々子さんが、「地域をつなぐ皆覧板(かいらんばん)」をテーマに発表。
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英語ディベートクラブの4人で、
SAの東海大会に応募。
田中:まずは、SA全国大会へのご出場おめでとうございます。全国111校のなかから15校に選ばれたわけですが、SA東海大会に出場しようと思ったきっかけから教えてください。
多和田:私たち4人はSDGsについて取り組むほか、英語ディベートのクラブで一緒だったんですが、澤田先生からやってみないかって。
澤田:うちの学校は、みんな勉強を一生懸命やります。部活も一生懸命やります。でも、それだけに飽き足らない子もいて、こうした高校生を対象にしたプログラムっていっぱいあって、それをみすみす見過ごしていくのはもったいないと思って。才能ある子たちなので、活躍の場を与えることができないかなと思っていて、いろいろなプログラムをいろいろな子に紹介しているんですね。
田中:そうなんですね。
澤田:そういうなかで、彼女たちは英語ディベートに取り組んでいるということは、つまり、目がそもそもちょっとグローバルな子たちなので、ぴったりなんじゃないかと。英語ディベートとSDGsって単純には結びつかないんですが、発想の根本には、内向きじゃなくて外に向かっていこうっていう部分が共通するんじゃないかなと思ったので、ちょっと可能性を感じて声をかけたのが最初ですね。
田中:本当に世間は広いようで狭いなっていうのをすごく感じていて、岐阜高校さんを見つけた時にものすごくうれしくて、おお、これはちょっとお話でもしなきゃと思って、ずっとプレゼンも見させてもらって、声をかけさせてもらったんですね。
私もSBにはプロデューサーとしてずっと関わっていて、SAもそれなりの思いがあって立ち上げたもので、未来を語るのにおじさんばっかり集まって話していたって、全然、未来を語れないんじゃないのって話になってくるので。本当は、もっともっとここを広げていきたいという想いが根っこにはあるんです。
みなさん、SA全国大会に出場してどうでした?
企業のSDGsへの取り組みが知れて、
とても勉強になった。
安田:SBにたくさんの来場者がいらっしゃっていて、Activation Hubにずっといたんですが、たくさんの企業の方とお話ができて、ちょっと大人の世界が見えたような気がして。
田中:大人の世界ですか。
安田:将来がちょっと見えたような感じがして、すごく貴重な経験をさせてもらったと思っています。
加藤:私も、彼女がいったのと同じで、Activation Hubが一番印象に残っていて。いろんな企業の人がSDGsへの取り組みをみんなに発信していて、私が高校生だからすごく丁寧に説明してくださって、自分もこの企業のこういう意見に賛成だなとか、そういう新しい発想が自分のなかでも浮かんできて、もっとこうなったらいいとかこうしたいっていうのが、自分のなかにあるっていうことに気づけたのが、すごくよかったかなと思います。
田中:みなさん、企業の人たちと話をしたんですね。
複数:はい。
田中:それはすばらしい。
佐藤:私も似たような感じなんですが、企業の方に気になることとかを個人的に質問する機会とかも多くて、詳しく説明してくださって、そういうSDGsについて具体的な取り組みとかを知れて、勉強になったっていうのがあります。高校生がSDGsについて取り組んでいるグループのnestとかの子が結構すごいなって思って。それも印象的でした。
多和田:みんなが全部いってくれたんですが、付け足すとしたら、私と同年代の高校生とか、さっきのnestの方々とか、全然、私たちが知っている世界よりも広い世界を見ているなって実感して。例えば、SDGsの目標の1つを達成するためにこういうアクションをしていこうとか、こういうリサイクルの取り組みをしているとか、私たちと同じ年代の子でも全然見てる世界が違うし、そうやって将来のことを考えて行動してるのがすごく印象深かったです。
あともう1つ印象深かったのが、日本だけじゃなくて外国の企業とかも見られて、日本だけでなくて世界全体としてSDGs達成のためにアクションを起こしているんだということもそうなんですが、企業だから利益を追求することも必要だっていうのはもちろんわかっているので、それをどう両立していくかっていうのが聞いていてすごくおもしろかったです。
田中:すごいところに気づきましたね。SDGsって世の中にいいことしている、それはもちろんすばららしいよねっていう話なんですが、これでちゃんと利益をともなっていくっていうのが実は大きな課題なんです。
さっきもいったように、未来世代の人たちをしっかり巻き込んでいって、ここで問題提起とかいろいろしてもらわなきゃっていうのが根っこにあって。みなさんに見ていただいて、そういった感想というのは、ものすごくありがたいし、参考にしていかなきゃいけない。
実はあそこにいたnestのメンバーは、私もやりたいって手を挙げてくれて、メンバーとして選定していったんですね。自分たちにも変えることができるって気づいていて、実際に行動に移しているんですね。
みなさんは、ほかの高校生たちを見てどう思いました?
安田:単純なんですが、最優秀賞を受賞した北海道の農業高校が、専門的な知識を用いられていて、高校生でもあそこまでできるんだってことに、本当にびっくりしました。
田中:そうね。そうね。
加藤:SAの発表を聞いていて、かなりレベルの高い内容を発表している人が多くて。ただちょっとやってみたじゃなくて、実際にいろんなところに働きかけて、もうやり始めている高校もあったし、そこから熱意がすごくきて、発表自体も伝えたいんだっていう想いが感じられて、話がうまいなっていう人が多かったのも印象的でした。すてきだなと思って。
田中:いやいや、みなさんも上手でしたよ。
佐藤:私は、もうすでにいろんな企業と連携していたり、地元の特性とかを生かして、斬新というかおもしろいアイデアとかがいっぱいあって、それがすごいなって思いました。
田中:地域らしさとか、自分たちのローカルイズムっていうか。そういうものがあった発表が、印象的だったんですね。
みなさんの発表は、何がきっかけで皆覧板(かいらんばん)アプリになったんですか?
地域コミュニティを活発にすれば、
SDGsも社会も明るくなるのでは。
多和田:きっかけっていうか、東海ブロック大会で東海テレビさんの講義を聞いて、そのなかで私たちが論文を出すってなった時に、それに関連したテーマにしたいよねってなって。東海テレビさんはマスメディアの1つだから、そういう報道に着目しようと思って、過去の新聞記事とかいっぱい読み込んで、そのなかで見つけたみたいな。
その記事の1つにSDGsの認知度の差みたいな、年代別での認知度の差っていう記事を見つけて、若者の方が学校教育とかインターネットとかで情報を得られるからSDGsの認知度が高い。高齢者に比べてっていうことがわかって、それって解決できないのかなって、みんなで話し合ったなかで、やっぱり高齢者と関わりを増やすためには、地域コミュニティが大事な役割を果たしているっていう結論に帰着して。
そこから、地域コミュニティってSDGsの認知だけじゃなくて、身近な、家族の次にたぶん小さな集団っていうか、そういうつながれる単位だと感じたので、地域コミュニティのなかの関わりを活発にしていけば、SDGsに限らず社会って明るくなっていくんじゃないのかなって感じで、深掘りしていってこういう発表になりました。
田中:私は視点がすごくよかったなと、問題定義としていいことをいっていると思いました。いろいろと調べていくなかで、岐阜県がどうしているかとか、岐阜市がどうしているかとか、そういう視点は持っていましたか?
多和田:ありました。
田中:こういう意見を、岐阜県知事とか岐阜市長に聞いてもらうとか、そういう機会をどんどんつくっていくっていうのも大事かなと思うんですね。みなさんにしたらあのプレゼンで終わっていたことが、意外にそれがきっかけになって地域コミュニティが変わったとかね。身近なところが変わっていくと、みなさんのこれからの自信になったりしますから。
でも、みなさんは大学に進学するために勉強もしなければいけない。このジレンマを感じてもらって、世の中はそんなうまくいかないんだなって気づいてもらうのも、私は大きな社会勉強になると思っています。みなさんがプレゼンしてくれたことを、次につなげなきゃ駄目じゃんっていうことではなくて、やっぱり問題提起してくれたことは、何らかの形で発信していかなければと思いながら聞いていました。
職業高校に比べると普通高校は難しい面はありますが、みなさんが視野を広げて提言してくれたことは、それはそれですばらしいと思いますよ。せっかく、4人が協力して全国大会にまで出場できたわけなんで、このまま解散というのも惜しいような気がします。
複数:確かに。
田中:英語ディベートの活動のなかにも、今回のことを生かすことができると思いますよ。
田中:澤田先生はどのように感じていらっしゃいますか?
澤田:私が一番強く感じたのが、SBもSAそうだったんですが、SDGsが実質的なところに入ってきた。SDGsが単なるお題目じゃなくて、本気でみんなが取り組むようになってきた。企業は企業なりに、高校生は高校生なりに、本気で取り組んでいるなって。その本気度が伝わってきて、私はそれに胸を打たれて。みなさんの熱量がすごかったですね。
だから、これから本当に社会が変わっていくんじゃないかなって。彼女たちにも未来を感じているし、企業の若い人たちがあんなに生き生きと一生懸命やっていたら、日本の将来は明るいなと思いました。だから、私はすごく楽しかったし、うれしかったですね。
田中:「行動の10年」っていわれているSDGsにあって、企業においても見せかけじゃないものが入ってきているのは間違いないですね。
澤田:彼女たちの発表に関していえば、まさに外に出ていって、出ていきっぱなしで終わったらあんまり意味がなくって。やっぱり帰ってきて、じゃあ今度は内側をどうしていくかっていうのが大きな課題で、外にいけば当然刺激が多いので、いろんな刺激を受けて、彼女たちも勉強してくるんですが、じゃあ、それで自分の足元を今後どう耕していくか。
そこが彼女たちの課題でもあるし、われわれの、学校としての課題でもあると思っています。ですから、日常の学校生活と外でいろいろ学んできたことが、うまくかみ合っていかないかと思うんですね。内で蓄えたことをまた外に出して、外からまた内へ戻してっていうこの往復運動がうまく機能していくといいなって、今、手探りでやっている感じです。だから、まだまだ発展途上です。
田中:私だけではなくてSBのメンバーは、未来世代っていうものの大切さをものすごく感じています。未来世代の人たちにどんどん意見をいってもらって、それを大人たちがしっかり許容していくところに、本当の、共に創る、共創が生まれるんだろうと思っています。
私がよく話をするんですが、ユーグレナっていう会社があって、ミドリムシの研究をしている。この会社が、日本初の国際子ども平和賞を受賞した川﨑レナさんを、CFO(Chief Future Officer)として迎えているんですね。これは、未来の自分たちの会社を考える役員のことで、高校生としては2人目です。
彼女がいっているのは、私は生まれ育った日本を誇りに思いたいと。だけど、私がこうしたいとか、世の中こういうふうに変えていきたいっていうことに対して、そのうちなみたいなところに憤りを感じましたと。これじゃあ、私は生まれた日本を誇りに思えない。だったら、私が変えてやるって。
こんなことを、現役の高校生がいっているんですが、国際子ども平和賞を受賞したってことは、やっぱり世の中がそれを認めたっていうことで。こんなに大それたことをしてほしいといっているわけではなくて、こうした可能性が高校生に、中学生に、小学生にもあるかもしれないと思っていて。やっぱり、大人も子どももないという世の中になってきてるのは間違いないなと。
なので、受験勉強もすごく大事だし、キャリアはつけていかなきゃいけないとは思うんですが、ああいうところに出ていって見聞きしたものは、何かの糧にしてもらえるといいんだろうなと思います。岐阜高校のみなさんが全国大会に出場したことは代え難い事実なんで、岐阜の高校生がここまでできたんだってことに、自信や誇りを持ってもらいたいと思います。
みなさんは、今後どうしていきたいと思っていますか?
課題を見つけてプレゼンするって、
すごくおもしろい。
多和田:私の個人的な視点になっちゃうんですが、この活動を通して私が一番思ったのは、いかに自分の住んでるコミュニティが恵まれていたかって。というのも、私が住んでるのは大垣市の郊外なんですが、すごくコミュニティーが温かくて。本当に近所の、お互いのことをみんなが知っていて、あいさつなんて日常的に飛び交うような。
正直、この研究をするまで私はそれが普通って思っていたら、ほかの子たちに聞いてみたらそんなことないし、近所の人ですれ違ってもあいさつも飛び交わないよって聞いて、ものすごく衝撃を覚えて。私の地域では、高校生が主体になって子ども食堂とかも開いたりしていて、そういう活動ってものすごいんですね。自分のところだけですが、そういうのを大切にしていきたいし、私が主導してっていうのも、おかしいと思うんですが。
田中:いや、いいじゃん。
多和田:率先してそういうのに関わっていきたいっていうか、いつまでもこういう温かいコミュニティを壊さずに、大事にしていきたいなと思いました。
田中:大垣市では、子ども食堂を結構やっていますもんね。
多和田:はい。友達のお母さんが主催してフードバンクとか、近くのスーパーとかと連携して、要らなくなった食材とか、賞味期限が近くなったものを子どもたちに配布したり、サステナブルな取り組みになっていると思います。
田中:ありがとうございます。ほかのみなさんはどうですか?
安田:私は岐阜市なんですが、多和田さんとかとは逆で、コミュニティがないんですね。地域には子ども会ってよくあると思うんですが、今それがすごく減っていて。お祭りとかもしていましたが、お祭りももうできないみたいな感じで、神輿ももう処分しちゃったみたいで、それを見ていて悲しい気持ちになったんですよね。
たぶん私の住んでるところは大垣市よりは都会なんですよね。やっぱり郊外の方がおばあちゃんとかおじいちゃんが多くて、コミュニティがつくりやすいっていうのが絶対あると思うんですよ。ですが、ちょっと都市に行ったら、それでコミュニティがなくなっちゃうっていうのはさびしいなと思います。
今回の「皆覧板」アプリを私たちが提言したのも、もともとコミュニティがある地域ではなくてコミュニティがない地域とかでも、若者とかが主導してやっていけるようにっていう想いがあるので、私たちの世代とか若者を中心にコミュニティが活発になっていけばと強く思います。
田中:すごいな。もう、「皆覧板」アプリを作ったら?
安田:いろいろ調べてみると、似たようなアプリっていうのは、たくさん存在しているんですよね。
田中:あるよね。
安田:そういうアプリを導入するのでもいいですし、それで何か自分の地域が変わったらいいなっていうのは思ったりします。
田中:すばらしい。ありがとうございます。
加藤:私も地域とあんまり関わりがなくて、私がたぶん公立の中学校に行かなかったので、子ども会とかにもほぼ関わりがなくて、ほぼコミュニティとのつながりっていうのは感じてなくて、この活動をやる前は、コミュニティのつながりって要るのかなってずっと思っていて、なくても生活できるし要らないかなって思っていました。
ところが、いろいろと調べてみたら、やっぱりあった方がみんなが幸せに暮らせるし、温かいまちの方が幸福度も上がるのかなって思っていたので、もっと自分の住んでるところがつながっていったらいいなと思うし、いろんな世代、世代間を、区別するっていうのではなくて、みんなで一体となって、高齢者だからとか若者だからってわけずに、みんなでつながっていけたらいいなと思って。
こういう自分たちで課題を探してプレゼンするっていうのが、すごくおもしろいなって感じているので、ほかに課題に思っていることとかも、いろんなリサーチをして提案とかできたらいいなって思っています。
田中:こういうことが1つのきっかけになると思うので、ぜひぜひやってもらえるといいかなと。
佐藤:私の住んでいるところも、コミュニティはそんなに温かい感じではなくて、そういうアプリとかが導入されたらいいんですが、導入する人がいない。これからどうなるんだろうなみたいな感じです。
田中:でも、そこで大人の人に頼んで、ちょっと無理だよっていわれることとかいろいろあったり、やろうやろうっていってくれる人もなかにはいるかもしれないし、そのあたりの価値観を共有し合って、どんどんいろんな話をして。さっき対話っていう言葉を使いましたが、いろんな人と意見交換して、いろいろと提案をしていくっていうのは、やっぱり大事なことだと思うんで。
サステナビリティとかSDGsについて、最後ちょっとお話をしたいんですが、そもそもどういう感じでとらえてるんですか?
SDGsって、自分たちにも
手の届きそうなところにある。
多和田:私はSAに参加する前は、みんながいってくれたみたいに、SDGsに対して知っているようで知っていないみたいな。だいたい、貧困をなくそうみたいな、食料廃棄をゼロにしようみたいな、そういう抽象的な概念はわかっていましたが、実際に企業が何をしているかとか、さっきいったみたいに、利益を追求しながら環境保護とか人権を守るとかを、どう追求しているかをまったく知らなくて。
それを、実際にSBを通して目の当たりにして、ものすごく理解が深まったと同時に、衝撃的だった企業の方の話があって。SDGsを言い訳にして、見せかけの善意をしているっていう話が1つの企業にあって、それがとても衝撃的だったのを覚えていて。というのも、それは、例えば、発展途上国に要らなくなった服とかを寄付しようっていうことになった時に、それは本当に発展途上国にとっていいことなのかっていうか、私たちは寄付することで自分が満足しているだけじゃないかっていう話を伺って。
田中:もう大人たちに聞かせたい話ですね。
多和田:よく考えてみると、それを送ることで発展途上国の発展を妨げているかもしれないし、実際、要らなくなった服って私たちが要らないものじゃないですか、それを廃棄するのにエネルギーを要したり、それを運ぶのにものすごい化石燃料を燃やしたりして、それってもう広い視点で見ると発展途上国にとってよくないことかもしれないのに、私たちはSDGsだからという理由でやってるって、1つの企業から話を伺ってそれがとても衝撃的で。
私って知ってるようで実は知らない、実はそれが一番危険なんじゃないのかなと思って。もっともっと広い視点で見ていきたいなと思ったし、そういうのを発信していくのってものすごく大事なんだなと思いました。
田中: いいことだと思っていることが、善意だと思っていることが、実はそうでなかったってことはたくさんあって。だから、そんなことにならないようするには、やっぱりお互いの立場を理解するっていうのが大事なのかなって思いますね。
佐藤:私は、もっとSDGsについて知りたいなって、今、思っていて。SDGsっていろいろなところにつながっているから、身近な問題とか世界の広い、遠い地域の問題とかいろいろ調べて、もっと知りたいなと。
田中:実は身近にあるものだと理解してくれると、案外やれることってあるんだと思うんです。本当に、あんまり遠くに目配せしなくても、難しく考えなくても、さっきの子ども食堂もそうだし、地域コミュニティでいろんな対話をすることによって、そこってほぐれていき、いや、何だ、そんなこと思っていたのっていうように、意外と人の心を通わせるってことにもつながってくるんじゃないかなと。もっと、身近なところにも目を向けてもらえると、おもしろいかなと思いますね。
加藤:この活動をする前までSDGsってすっごい大きな目標で、例えば、貧困をなくそうとか飢餓をゼロにしようとか、普通に考えてみたら、そんなこと無理なんじゃないかっていう課題しかほぼないなってずっと思っていて、そんなこと絶対できないんじゃないかってずっと思っていたんですね。
この活動を通じて、SDGsって1つの項目がどういう意味なのかっていうのを調べた時に、いろんなターゲットが出てくるじゃないですか。それを見たら、自分たちが身近で課題に思っている小さなこともターゲットにあって、意外に自分たちにも手が届きそうなところにあるんだっていうことに気づいてから、ちょっとSDGsに親しみを持ったっていうか。
田中:よかった。
加藤:できそうなのかもしれないと思いました。
安田:私はSDGsについて最初に聞いた時は、環境問題みたいな側面とかが大きかったり、あとは貧困だったり、そういうところが大きくて、何かわかりやすく節水しようとかマイバッグ使おうとか、そういうことにがんばるしか、SDGsに取り組むって思い浮かばなかったんですね。
でも、この活動に参加してSDGsって意外と、まずは自分の身の回りからなんだなって思って。SDGsって世界全体の目標ですが、周りの人を思いやる心が世界に広がったら、きれいごとかもしれないんですが、世界がだんだんよくなっていくなみたいな、そういう感じで。
このRe:touchでも、岐阜のよさを広めるためにインタビューされていると思うんですが、SBに行った時に、大垣市の職員さんとお話することがあって、その時に印象的だったのが、大垣のこういうところがいいところなんだよって教えてくださって。でも、自分は岐阜のことをあんまり誇れないんですね。
田中:私もそうですよ。
安田:でも、その職員さんはすごくて、大垣が大好きだっていって、水まんじゅうがあって。これがキャラクターだって教えているんですよ。その横で、私は、岐阜?ってなっていて。何が岐阜にあるんだろうって思った時に、岐阜のことをあんまり知らないし、誇りに思えるほど好きじゃないといったらあれなんですが。てことは、まずこの岐阜というコミュニティを大切にしていくことが、実はSDGsへの一歩だったりするのかなっていうことを感じました。
田中:いや、すばらしい。私もSDGsへの取り組みを始めたのは、自分のふるさとを誇りに思いたいっていうのがきっかけだったんです。やっぱり、自分が生まれ育ったところなので。今の話なんかもすごく大事なことだし、大垣を誇りに思う、もう本当に大いに結構なことで、もうどんどんそういうことをアピールしてもらいたいと思うし、ただ、そういうアピールがなかなかできない。
表現の仕方が下手なだけだと思うんですね、岐阜は。こういう人との交流を、こんな熱い人がいっぱいいるんだよみたいなところを、どんどん発信していけばいい。それをいろんな人が見てくれているし、それがいろいろな人につながっていくんで。
彼女たちが世界を広げてくれれば、
それでいいかなって。
澤田:私は、生徒たちには、岐阜高生には、「はみ出せ!青春」っていってるんですよ。昔、『飛び出せ!青春』っていうテレビドラマがあったんですが。
田中:ありましたね。
澤田:でも、飛び出しちゃってはいけないので、やっぱり軸足はちゃんと固定しながら、もう一方の足をいろんなところに出していきながら、自分の世界を広げていけばいいと思っているんですね。高校生だから当然、勉強しなきゃいけない。じゃあ、勉強だけしてればいいかって、そんなことないですよね。彼女たちはちょっとはみ出したわけです、SAでね。
SDGsの取り組みは、やっぱり「S」(持続)と「D」(開発)の部分、ちゃんとつながっていないと、継続していかないと意味がないと思うので、今回こういう経験が、そのままダイレクトに次につながるかどうかは別として、確実に何らかの形で、彼女たちの世界を広げていってくれれば、それでいいかなと思っています。
田中:そうですよね。
澤田:岐阜高生のみんなにはどんどんはみ出してほしいなと。
田中:岐阜高校の卒業生って政財界で活躍してる人が多くて、もう本当にいろんなところに羽ばたいているんですよね。だから、やっぱり大学に進学されてもここで得たものを、自信を持って今後の人生に生かしてほしいなと思います。まだ2年生だから、これからなんでしょうが。
最近、私がうれしかったのは、横浜国大に呼ばれて大学生を中心に話をしたんですね。そしたら、地方出身の大学生が、地方もいいなと思うようになって、まちづくりに興味を持ったって話してくれて。たぶんその大学生は、本当に帰ると思いますよ、広島出身だっていっていましたが。
今年、岐阜大学で1年間授業を持ってフィールドワークをやっていくんですが、ローカル・イズ・バックじゃないですが、地方のよさを見直していきたいと。実は、これがSBのテーマなんですね、今年度の。ローカルに、地方に活路を見いだすみたいなことをテーマとしてとらえていて。SBのグローバルのテーマが、ローカルに、地方に活路を見いだすなんですよ。
これまでいろいろなところでグローバル、グローバルっていわれてきましたが、コロナ禍がそれを遮断してしまったようなところもあるので、みなさんにも岐阜の地域企業に注目してもらいながら、いろんな視点を持ってやっていってほしいと思います。
今日はどうもありがとうございました。
TOPIC
東京で開催された全国大会で発表。
SDGsの目標を達成するためのアイデアをまとめようと、SDGsに関連した新聞記事を片っ端から調べ、年代別の認知度の差という報道にたどり着く。若者と高齢者とでSDGsに認知度の差があるのは、地域コミュニティがうまく機能していないからと、ICTを活用した回覧板アプリ「皆覧板」を開発。若者が主体となって運用することで、地域コミュニティが抱えている担い手不足や世代間ギャップ、ダイバーシティなどの社会課題を解決していくとした。
こうした岐阜高校の4人の提案は東海大会の代表として、全国111校のなかから15校に選ばれ、2023年2月に東京で行われた全国大会に出場。サステナビリティのリーダーたちが集まるSBを見学することもでき、SDGsとの新たな出会いという貴重な経験をすることできた。
Company PROFILE
企業名(団体名) | 岐阜県立岐阜高校 |
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代表者名 | 校長 石田 達也 |
所在地 | 〒500-8889 岐阜県岐阜市大縄場3丁目1番地 |