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Interview
SDGsの先駆者に訊く

Re:toucher 24
地域貢献ツアーや
SDGs研修会など、
新たな社会課題に向き合う。

スイトトラベル株式会社(岐阜県大垣市)

常務取締役 杉﨑 康宏さん[写真左]
松原 真士さん[写真右]
インタビュアー Re:touchエグゼクティブプロデューサー 田中 信康
SDGsターゲット
  • 08 働きがいも経済成長も
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです
戦後の混乱期、大垣市の皆さんの足になって地域の発展に寄与したいという創業者の想いから発足したスイトトラベル。コロナウイルスの感染拡大で、本業のタクシー事業やトラベル事業が大打撃を受けたことから、創業の理念に立ち返ってビジネススタイルを見直している。お弁当を宅配するサービス「スイトタク配」は、緊急事態宣言で外出できなくなった家庭に、おいしいものを届けたい。お客さまの足が遠のいて、経営が逼迫されている飲食店のお役に立ちたい、そんな願いが込められている。 また、長引くコロナ禍で、遠くへ観光や旅行することがなくなり、岐阜県や大垣市のことを知る機会となった。貨客混載やステップ除菌バス、除菌タクシーなど、ニューノーマルへの取り組みが続くなか、この1年間に蓄積できたことを、例えば、地域貢献ツアーやSDGs研修会として生かせないか、新たな社会課題と向き合っている。今回は、スイトトラベルの常務取締役である杉﨑康宏さんと、スイトタク配を担当されている松原真士さんにお話を聞いた。

大垣市の皆さんの足として、
地域の発展に寄与したい。

田中:スイトトラベルさんの概要からお話いただけますか?

杉﨑:西濃運輸(現セイノーホールディングス)で3番目のグループ企業として、昭和26年という戦後の混乱期に発足して、今年の2月でちょうど70年周年を迎えました。大垣市の皆さんの足になって地域の発展に寄与したいという創業者の想いからできた会社で、平成21年に旭トラベルと合併してスイトトラベルに社名を変更しています。昭和56年にはジャンボタクシーを全国に先駆けて導入したり、平成13年には介護タクシーに参入したりと、タクシー事業を中心にトラベル事業や観光バス事業、また、コミュニティバスや運転手派遣などの自家用自動車管理事業も行っています。

田中:スイトタクシーといえば、大垣市では皆さんよくご存じですからね。

杉﨑:ありがとうございます。最近では、タクシーのように自宅までお迎えに行って、バスのように乗り合いでご利用いただく、「デマンドタクシー」もやっていて、海津市や大垣市でも上石津町などで運行しています。

田中:コロナ禍の影響も大きいのではないですか?

杉﨑:そうですね。タクシー、観光バス、トラベルが、大きな打撃を受けていますね。緊急事態宣言が出てからは観光や旅行ができなくなってしまいましたので、それらを大垣市の皆さんの送迎にシフトすることで少しでもお役に立てるようにしています。また、このコロナ禍がきっかけで、お弁当を宅配する「スイトタク配」を始めることにしました。

田中:そういった意味では、スイトトラベルさんも創業の理念の立ち返って、ビジネススタイルを見直されているということですね。

杉﨑:創業当時から、どうしたら大垣市の皆さんに喜んでいただけるかを、常に考えています。利益は利益で、また別として。

田中:社員の方って何人ぐらいいらっしゃるんですか? ドライバーの方も含めて。

杉﨑:今、350人ぐらいですね。ドライバーや派遣の運転手も含めて。

田中:そんなにいらっしゃるんですね。

杉﨑:コミュニティバスの運行や官公庁への派遣ドライバーとか、あまり影響を受けていないところもありますが、今のうちにいろいろと考えていかなければなりませんね。

田中:SDGsは、そうした切り口の一つになりますね。

杉﨑:そうですね。SDGsを含めた地域に貢献するツアーなどの取り組みを始めたところです。

田中:大手旅行代理店などがすでに動き出していますからね。

松原:この1年、あまり遠くへ行くのではなく、岐阜県での観光や旅行が増えています。私たちも、岐阜県の観光資源を見直すことになりまして、それがいろいろと蓄積できてきました

田中:やはり、そうですか。

杉﨑:そうした岐阜県の観光資源と、地域貢献やボランティアなどを組み合わせることができないか、みんなで必死に考えているんですよ。

田中:子どもたちも遠足や修学旅行に行けなくて、本当にかわいそうで仕方ありません。せめて、岐阜県でそうしたことを考えていただけると、自分のふるさとのいいところを知ってもらえることにもなりますし、楽しい思い出をいっぱいつくってもらうことにもなりますしね。

杉﨑:まだ、具体的ではないんですが。

田中:SDGsに取り組んでいる会社を見学するというのでもいいですね。ぜひ、一緒にやらせていただきたいですね。

杉﨑:ぜひ、お願いします。


タクシーでお弁当を宅配する
「スイトタク配」。

田中:ところで、スイトタク配はどういったサービスなんですか?

杉﨑:コロナ禍で、地域の皆さんがご飯も食べにいけない。飲食店の皆さんもお客さまが来なくて困っていらっしゃるなかで、じゃあ、タクシーでお弁当を運べないかということで。

田中:タクシーでお弁当を運んでもいいのですか?

杉﨑:国土交通省から、食料品や飲料を運んでもいいよという特例措置が発令されたんですよ。

田中:そうなんですね。

杉﨑:スイトタク配を始めてから、SDGsの補助金があることを教えていただきまして、それまでは、飲食店さんとご利用者さまの間をお弁当と料金の受け渡しで往復していましたが、ネット決済するシステムを構築することで片道でよくなりました

松原:今年の2月末までは補助金を使えるということでしたので、その期間をテストマーケティングと位置づけて運用していました。

田中:テストマーケティング期間中には、どのくらいの方がご利用されたんですか?

松原:1月23日から2月末までの間に、116件1,088個の実績を上げることができました。

田中:それで、見えてきたことはありましたか?

松原:このサービスのスタート時点では、まず、飲食店の皆さんのお役に立てることを優先していましたので、ご利用者さまからいろいろなお声をいただきました。例えば、ネット決済だけでなく、現金や電子マネーで支払えないかとか、ネット注文だけでなく、電話で注文することができないかとか、いろいろなご要望をいただきました。

杉﨑:そうしたことを1カ月間で見直しまして、また、4月からサービスを再開しています。ご利用者さまが直接、飲食店さんに電話で注文できるようにしましたし、配達時に集金させていただくこともできますし、タクシーに搭載している料金決済システムを活用することで、クレジットカードや電子マネーでお支払いいただくことができるようになりました。

田中:そうか、タクシーの料金を支払う仕組みを活用されているのですね。

杉﨑:それと、テストマーケティング期間中は、大垣市限定で運用していましたが、西濃地域全体でご利用いただけるようにしています。これも、ご利用者さまのご要望で。

田中:ご利用者の方の声をしっかりと拾われて、すばやくご対応されているんですね。

松原:そうですね。

田中:これからの目標って立てていらっしゃるんですか?

松原:毎月の件数とか目標は立てていますが、エリアをどうしていくかとか、飲食店さんのバリエーションとか、これから検討していかなければならないことはありますね。

田中:現状は、まずまずといったところですかね。

杉﨑:こうしたサービスがあることを大垣市の皆さんに知っていただくことができましたし、ご利用者さまや飲食店さんにも喜んでいただいているのでよかったと考えています。コロナ禍が終息したらどうするんだということもありますが、お弁当を食べたらおいしかったからみんなで行ってみようかということにでもなってくれれば、それはそれで本望ですね。

田中:地域ブランドの食材をタク配するとか、いろいろと可能性が広がってきそうですね。地産地消にも貢献しますし。

松原:会社の会議とか研修会とかのお弁当にもご利用いただきたいですね。

杉﨑:いろんなご利用方法をご提案していきたいと考えています。

田中:(リーフレットを見て)どれもおいしそうだ。とりあえず、コロナ禍での社会貢献を最優先に運用されているとは思いますが、こうしたことがビジネスとしても成り立つようになればいいですね。SDGsもきれいごとばかりで続かないので、そこが難しいところでもありますが。

杉﨑:そうですね。単にお弁当を運ぶのであれば、西濃運輸がやればいいことなので。うちはタクシーの会社であり、トラベルの会社ですので、こうした視点で、どうしたらお客さまに喜んでいただけるのかを、一生懸命に考えているところです。

田中:今のお話ってすごくいいなと思ってまして、日本の会社って縦割りが多くて、みんなで横串で取り組んでみると、新しい発想なんかが生まれたりしますから

杉﨑:そうなるといいですね。


コロナ禍のニューノーマルにすばやく対応する。

田中:このコロナ禍で、貨客混載とか「ステップ除菌バス」とか、いろいろと始められていますね。

杉﨑:岐阜県の揖斐川町ではタクシーが個人のお宅に荷物を運んだり、乗車時に洗浄除菌剤を染み込ませた衛生マットで足踏みしてもらうバスを運行したりしています。

田中:いろいろとあるもんですね。

杉﨑:あとは、除菌タクシーもやっています。海外から日本へ帰ってくると、ホテルで14日間、隔離されるんですね。公共交通機関には乗ることができませんが、貸し切りの除菌タクシーなら移動できますので、例えば、空港から大垣市のホテルまでの送迎などに、毎月何件かはご利用いただいています。

田中:タクシーを消毒するの大変なんですね。タク配もそうなんですが、こうしたことが、ご利用者の方はもちろん、スイトトラベルさんにも、大垣市の皆さんにも、「三方よし」につながってくると、本当にいいですね

杉﨑:そうですね。

田中:SDGsのことはずいぶん前からご存じだったんですか?

杉﨑:正直にいうと、SDGsのことは知っていましたが、具体的にというか、積極的にということではなかったんですが、今回のコロナ禍や補助金がきっかけで勉強させていただいています。

田中:先ほど少しお話させていただきましたように、地域貢献ツアーとかSDGs研修会とかは地域の会社がやるべきだと考えていますので、ぜひご相談させてください。私が、SDGsがすごくいいなと思うのは、交通手段としてタクシーを利用させていただくとか、スイトトラベルさんのパッケージ旅行を利用させていただくような視点しかなかったのが、こうしたまったく違う業界の方と一緒にやりませんかというお話ができるようになりますので。

松原:お弁当のタク配をさせていただく前までは、もう100パーセント旅行業だったんですね。地域の皆さんをどこかお連れするのが中心で、北海道の温泉地の旅館とタイアップすることはあっても、岐阜県や大垣市の皆さんと連携することはありませんでした。この1年間ものすごく岐阜県のことを勉強しましたので、これを本業、旅行業に生かしていきたいですね。

田中:大垣市の飲食店さんにランチに行っても、あんなに流行っていらっしゃったのに、ここがなくなったら困るよっていうおいしいところがいっぱいあるじゃないですか。

杉﨑:コロナ禍やSDGsで、本当に岐阜県や大垣市をよく知る機会ができましたので、何かにつなげたいですね。

田中:これらがいろんなことに気づかせてくれましたね。地域再発見っていう視点でいうと、こんなところがって、意外と知らないんですよね。

杉﨑:SDGsを含めた地域に貢献するツアーをやってみたいという想いが強くなりました。

田中:今日は、ありがとうございました。

TOPIC

  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです
スマホやパソコンで簡単に注文ができ、
自宅や会社にお弁当を届けてくれる。

スイトトラベルが新しくサービスを開始した「スイトタク配」。スマホやパソコンで飲食店を選んでお弁当やオードブル、スイーツなどを注文すれば、スイトタクシーが自宅や会社まで届けてくれる。ドライバーは毎日、検温、マスク着用、車内は換気、除菌をしており、コロナ対策も万全。和食、洋食、中華、カレー、寿司などメニューも豊富で、大垣市の人気店から料理したてを運んでくれて、1回の注文でエリア内なら660円と配達料金も心配なし。お届け希望日の前日20時までに注文すれば受け付けてくれる。ご家庭でのランチや夕食、慶弔、また、会社での会議や研修会、接待などにも利用できる。詳しくは、下記まで。

スイトタク配注文サイト https://suito-takuhai.com/delivery/
スイトタクシー 0584-78-7155

Company PROFILE

企業名(団体名) スイトトラベル株式会社
代表者名 代表取締役 田口 義隆
  取締役社長 梅村 和行
所在地 〒501-6236
岐阜県大垣市旭町3-11

Re:touch Point!

SDGs視点でのツーリズムの提案に、一緒に知恵を絞らせていただきたい。

Re:touch
エグゼクティブプロデューサー
田中 信康
新型コロナウイルスに不自由な生活を強いられてすでに1年。スイトトラベルもまた創業の理念に立ち返ることで、この窮地を打開するための取り組みを模索されている。企業として地域社会に貢献できることは何か、その回答がステップ除菌バスであり除菌タクシー、貨客混載は、ドライバー不足という輸送業界が抱える構造的な課題にも対応されている。
そして、大垣市の人気店のお弁当を家庭や企業に宅配する「スイトタク配」。コロナ禍が浮き彫りにする新たな社会課題から生まれたこのサービスは、経営のピンチに直面する飲食店、緊急事態宣言で外出できない家庭、ニューノーマルでのタクシー事業展開と、これら「三方よし」を実現する。また、今回のインタビューから、地域貢献ツアーやSDGs研修会など新たなツーリズムの提案へとアイデアが広がったことは特筆すべきで、ぜひ一緒に知恵を絞らせていただきたい。