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Interview
SDGsの先駆者に訊く

Re:toucher 15
小さなことをコツコツが、
SDGsの根本なのだろうと。

社会福祉法人 大東福祉会(岐阜県大垣市)

理事長 関根 良一さん
インタビュアー Re:touchエグゼクティブプロデューサー 田中 信康
SDGsターゲット
  • 01 貧困をなくそう
  • 02 飢餓をゼロに
  • 03 すべての人に健康と福祉を
  • 04 質の高い教育をみんなに
  • 05 ジェンダー平等を実現しよう
  • 07 エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  • 08 働きがいも経済成長も
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 12 つくる責任 つかう責任
  • 13 気候変動に具体的な対策を
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです
特別養護老人ホーム、グループホーム、有料老人ホームを中核に、総合的な介護サービスを提供する社会福祉法人 大東福祉会。こうした介護施設の運営自体がSDGsの取り組みと話す関根理事長は、テレビで飢餓に苦しむ子どもたちを見るたびに涙を流すほど、子どもたちへの熱い想いを持つ。
また、ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業、新はつらつ職場づくり宣言事業所、人材育成事業者グレード2にとどまらず、キッズスペースの設置、アカデミーの開講、ベトナム人実習生の受け入れなど、介護施設の新たな価値創造に向かって先陣を切っている。小さなことをコツコツと継続してやる。謙遜とも聞こえるその言葉に、SDGsの根本があった。

Movie


大きく構えてやることではなく、
日ごろからの積み重ねが大事。

田中:Re:touchは、地域貢献という切り口でやっていますが、みなさんからすごくありがたいといっていただいています。こういうご縁をいただくことが、本当の意味で地域を盛り上げていくことになると思っています。

関根:そうですね。私も、地域のいろいろな業種が集まって地域を盛り上げていくことで、SDGsの取り組みにつながっていけばと思います。実は、この施設の運営自体がSDGsに直結していて、大きく構えてやることではなくて、日ごろの積み重ねが大事だろうと。それと、子どもたちへの想いがすごくあって、アフリカの子どもたちにワクチン接種ができないとか、テレビでそういったニュースを見ると、とても心が痛みます。涙が出てくるくらいで。エコキャップや使用ずみ切手の回収も、途上国のそういうところに届けばいいという想いがあります。小さなことをコツコツと継続してやることが、SDGsの根本なのだろうと思っています

田中:そこから始まって、最後は環境省から表彰されたという、中小企業の社長さんとかをよく見ていますよ。

関根:こんなことをやっていこうと範囲を広げて、それが、逆にスタッフの負担になってもいけないですし、施設の運営もそうですが、SDGsも、私一人が気を張ってやるのではなく、スタッフのモチベーションを上げて、一緒に取り組んでいこうという想いでやっています。それが、介護への想いだとか、業務につながっていく。そういう相乗効果も狙いつつ、少しずつやっていこうと思っています。

田中:そうですよね。この業界は、特に、利用者の方々に対する配慮といったところでは、SDGsのマインドを持っていないと。行動指針とか理念のところにしっかりと掲げられていますね。

関根:2年前に、行動指針5「新たな価値を創造し、持続的な成長を果たします」を加えています。単に今だけを見ていては前に進んでいけないので、5年後、10年後を見据えた新しい価値を見いだして、どんどん先陣を切ってやっていこうと。

田中:お聞きしてよかったです。SDGsの根本的なところというのは、ここだと思っていますから。

関根:福祉って地域の人とやっていきましょうね。スタッフ同士の和を大事にやっていきましょうね。こんなことが当たり前のように繰り返されているのですが、介護保険制度も3年ごとに変わっていきますので、それに向けて、私たちの意識も変えていかなければ生き残っていけないのです


キッズスペースの設置やアカデミーの開講など、
介護施設の価値創造をめざして。

田中:大東福祉会についてご存じではない方もいらっしゃると思いますので、概要とかを少しお話しいただければと思います。

関根:24年前に、社会福祉法人として特別養護老人ホームを開設。10年後に、グループホームという認知症の施設を開業して、ちょうど3年前に、有料老人ホーム、そして、デイサービスの併設施設として、本体施設の北側の施設を開設しています。5階建ての中央棟は、特別養護老人ホームとショートステイで、どちらかというと重度の方の施設。要介護3以上でないと利用できないのですね。グループホームは認知症の方の施設で、有料老人ホームとデイサービスは、どちらかというと自立の方から軽度の方の施設。こういった総合的な介護サービスのシステム化が、ようやく3年前にできました。

田中:そのなかで、インカムを導入されたりして、ワーク・ライフ・バランスとか、はつらつ職場づくりとか、人材育成のグレード2にも認定されていますね。

関根:何をやるにしても、目標って大事だと思います。こういうことやっている、ああいうことやっているというだけでは、なかなか説得力がなくて。例えば、新人の採用においても、学校で岐阜県が認定する事業だとお話すると、ご納得いただけるのですよ。

田中:キッズスペースを地域にも開放されたりとか、コロナの件で大変だと思いますが、時代の変化に柔軟に対応されながら、いろいろとサービスの拡充をなさっているのですね。利用者の方々からも励ましのお声だとか、厳しいこともなかにはあるでしょうが、こういうものに認定されていれば、働いている方々の心の持ちようも変わると思いますし、利用者の方々にも信頼していただけるのではと。

関根:これも無理してやることではなくて、日ごろの積み重ねですね。正直、人材確保が難しいです。そうすると、そういう取り組みを必然としてやっていかないといけないですよね。残業を減らすとか有給休暇の取得もそうですが、今後、子育て世代の子たち、潜在的にいるスタッフを掘り起こすこともやっていかないといけないなかで、施設や法人としてやっていかないと選ばれる施設にならないのであれば、もうこれやらざるをえないのですよ。

田中:アカデミーを開講されたことも、次の世代につげていくという意味で、すばらしいですね。

関根:休みの日を使って、名古屋や岐阜に受講に行くとか、研修を受けようと思ったら、丸一日かかるのですね。ましてや資格取得って長期で勉強していかないといけないので、そういうのをこの施設で、休みではなくて勤務時間に受けることができる。しかも、法人が費用をすべて負担するというようなことをやっていけば、スタッフに対しても資格取得のモチベーションにつがっていくと思うのですよ。


前向きに取り組むことで、
新しい何かを見いだすきっかけに。

田中:それで、SDGsに手を挙げられて、トップである方に旗を振っていただくというのは、スタッフの方々にもモチベーションにもなりますね。SDGsに取り組まれてから、これに賛同してくださるスタッフの方々って、何人か出てこられたのではないですか?

関根:特に、エコキャップとか使用ずみ切手は、みなさんに意識して持ってきていただいて。

田中:わかりやすくていいですよね。

関根:日ごろのことは、いくつか業務に直結する内容が入っていますので、環境にやさしい取り組みをやっていこうと。例えば、うちですと、給食の関係ですとか、デイサービスですと、運転の関係ですね。すべて業務のなかで、環境とか、経費削減、それから、ペーパーレスなどを、スタッフに意識して取り組んでもらえればと思っています。

田中:自分たちがやられてきた業務だから、何だSDGsってすごく身近という感覚を持たれたのではと思います。

関根:大事なのは、きっかけと、継続することですよね。それをやるには、無理してはできないと思います。

田中:さっきの子どもたちに対する想いだとかというところは、介護のことをやっていらっしゃると、人に対する想い、やさしさというのは、他の業界よりも強いと感じます。

関根:福祉や介護をやるきっかけって、そういう想いから始まりますものね。

田中:大垣市にもSDGsに手を挙げていただいて、学校教育の現場へも、私もいろいろと伺うようにさせていただいているのですが、それこそ子どもたちの方が熱は強いので、こういうことを教えていくと、すごく目がキラキラしていて、逆に私たちが教えられている気分になります。

関根:私は、長年、少年団に携わっているのですが、いつも子どもたちにいっています。コロナ禍でみんな辛いが、前向きにいこう。強い社会人、人間になるには、今、経験していることは、すごいことだよと。やることやることを前向きに取り組んでいくことが大事で、それが、持続性のある新しい何かを見いだすきっかけになると思います。とにかく、まちが、組織が、会社が、人間が動いている。そういう流れをつくっていきたいですね。


ドローンで配食サービスなど、
若いスタッフが発想を変えて。

田中:そして、「ありがとう」「ごめんなさい」。根本的なことですものね。

関根:私はこの言葉に尽きますね。少年団の子どもたちにも、ここのスタッフにも。

田中:これはどういう位置づけになっていらっしゃるのですか?

関根:基本理念に対する内容ですね。介護の仕事、ただ、支援、援助するだけじゃないよと。そもそも人間性を尊重するところから始めないといけないという想いが、そのなかに入っています。

田中:シンプルな言葉ではあるのですが、これを追求していくことがいかに大切で難しいか。

関根:シンプルだからこそ、奥が深いことですよね。人間性を尊重するということは。

田中:職員の方で若い方はいらっしゃるのですか?

関根:うちは介護施設のなかでも若いスタッフが多いと思います。毎年3~5人新卒の採用をしています。外国人の技能実習生の受け入れも、2年ほど前からやっていまして、今、3人います。うちはベトナムの子で、みんなよく働きますし、見習うところがたくさんあります。日本語の教師を雇って、しっかりと日本語の勉強もしてもらって。例えば、3年で帰るのであれば、スキルアップを十分にして、母国に帰って生かしてもらいたいという想いで。

田中:何年ぐらいお勤めなのですか?

関根:1年半ですが、3人ともN3取って、今度、N2に挑戦する予定です。

田中:価値を創造するって、福祉サービスをやっていらっしゃる団体の方で、本当にすごい着眼点を持っていらっしゃるなと共感しているのですが、さっきの5年後、10年後を見据えられて、こうなっていきたいんだという将来像って持っていらっしゃるのですか?

関根:時代に乗り遅れないようにしていきたいと思っています。ICTもそうですし、介護ロボットもそうですし、対人サービスって意外とそういうテクノロジーを毛嫌いするところがあるのです。でも、世の中はそういう時代になっていくので、5年後、10年後見据えた時に、少しずつ慣れていって、いずれ自分たちの業務のなかに取り入れていくことが必要だと思います。ドローンとかもそうです。これ介護でいえば、配食サービスにも生かせるとか。発想を変えていけば、そういう転換ができるのですね。そういうのを新たな価値として、今後、若い子たちに、どんどん発想を変えていってもらいたいなという想いはありますね

田中:いいお話をお聞きすることができました。

関根:人間もひょっとしたら、ICチップが埋め込まれて、体は劣っていくけれど、脳はしっかりしているとか。介護サービスも時代とともに変わっていきますので、そこは着眼点をそちらに向けて、しっかりやっていかないといけないと思っていますね。今の寄り添い介護だけではダメだろうなと。科学的な介護になっていくんだろうなと

田中:機械に頼っていく部分と、人でしっかりと補っていく部分というところは、それこそ、SDGsの真心みたいなところで。こういったところを愚直にやられているからこその視点であると思います。今日は、ありがとうございました。

TOPIC

  • 01 貧困をなくそう
  • 03 すべての人に健康と福祉を
  • 08 働きがいも経済成長も
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです
途上国の子どもたちに想いが届けばと、
エコキャップと使用ずみ切手を回収。
大東福祉会が、SDGsの取り組みとして始めたのが、エコキャップと使用ずみ切手の回収。介護施設にオープンな回収コーナーを設けて、スタッフはもちろん利用者やそのご家族にも呼びかけている。関根理事長の子どもたちへの熱い想いから実現したものだが、スタッフにSDGsを身近に感じてもらうことにもなっている。

Company PROFILE

企業名(団体名) 社会福祉法人 大東福祉会
代表者名 理事長 関根 良一
所在地 〒503-0835 岐阜県大垣市東前1丁目79番地

Re:touch Point!

子どもたちを救いたいとの想いが、安心安全な介護サービスの持続的な提供へと、SDGsの赤い糸でつながっていく。

Re:touch
エグゼクティブプロデューサー
田中 信康
大東福祉会の介護施設の運営自体がSDGsの取り組みだという視点はとても大事。エコキャップや使用ずみ切手の回収もそうだが、スタッフの身近なところから入っていけばいいし、その延長線上に、介護施設の新たな価値創造を見据えられているところもすばらしい。これが、SDGsの根本。
小さなことをコツコツとおっしゃっていたが、子育て世代のスタッフに配慮されたキッズスペースは、地域にも開放されている。また、勤務時間に受講できるアカデミーやベトナム人実習生の受け入れなど、利用者にも家族にも安心安全な介護サービスを持続的に提供していくための施策は、時代の変化を敏感に察知されている表れといえる。