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子どもたちの勉強や生き方に、
よくわからない価値観を押しつけているのでは。
田中:竹鼻中学校の概要を教えてください。
不破:羽島市役所の隣にありまして、生徒数は549人(令和2年度)です。竹鼻小学校と福寿小学校の2校区にまたがっていて、羽島市の中心部の子どもから郊外の子どもまで、一生懸命に学ぶ子どもが多いと思います。
田中:この中学校ができてからどのくらい経ちますか?
不破:今年の3月8日に卒業した生徒が74回生です。
田中:どうしてSDGsに着眼されたのですか?
森山:私は、社会科の教員なので、社会科のいろんなことを学んでいくと、SDGsがよく出てきます。教員になってまだ4年目ですが、子どもたちの勉強や生き方において、漠然とした暗黙の了解とか前年踏襲とか、よくわからない価値観を押しつけていることが、学校教育にあるのではと感じていました。そんななかで、子どもたちは忖度してやっていたりとか、とりあえずいわれたからとがんばっているのですが、世界がめざしている目標を学校教育に落とし込んだら、子たちが本当に意味があるからこれをやるんだ、勉強するんだということになるのではと思いました。そこで、不破先生に相談したら、一緒にやろうということになりました。
田中:SDGsに初めて触れられた時の印象はどうでしたか?
不破:中学生時代、リサイクル活動とか環境問題とか、土曜授業でやっていたことを思い出しました。自然とか環境とかいつも自分の近いところにあって、私の価値観を押しつけるつもりはさらさらないのですが、いろんなものを生徒たちに触れさせてあげたい。SDGsには、17の目標にたくさんのことが入っていて、しかも世界中が取り組んでいることで、本当にうってつけの話だなと思いました。
田中:本当に、すんなりと入っていけたのですね。
森山:そうですね。社会科ってASEANとかEUとか、アルファベットを覚えることが多いのです。それで、新しい言葉なんだと思ってピクトグラムを見て、何か色鮮やかだなあと思い調べたら、もやもやしていたものが吹っ切れました。子どもたちからどうして勉強するのとか、どうしてこうしなきゃいけないのと聞かれた時、その答えや道筋になるのではと思いました。
田中:すごいですね。やっぱり教育者だからですかね。SDGsって一般的には敷居が高いとか、難解に見えるとかいう人が多くて。
不破:子どもたちは純粋なので、これ大事だよといえば、きっと受け入れてくれる。そこには、確信がありましたね。でも、学校全体で取り組みたいという想いがあって、まずは、SDGs推進ネットワークに入って後ろ盾になってもらおうと。そこで、サンメッセさんともつながることができました。
田中:SDGsって結構、社会貢献だけで終わってしまう人がいて、これで解決をしていくのだというところまでつがっていないことが、実は多いのですよ。
新しい教科書とSDGsの関連がわかる
カレンダーを教室に掲示したい。
不破:まず、知ってもらうことが最初かなと思います。今、来年度に向けてやっているのが、SDGsカレンダー。教科書がちょうど変わるのですが、どんなことがSDGsの目標に関わっているかを、月ごとの一覧表にして教室に貼ろうと計画しています。
田中:すごいですね。どのくらい進んでいるのですか?
不破:カレンダーの半分ぐらい埋まっている状態です。4月から学習指導要領が変わりますので、それに合わせて。
田中:それって、子どもたちが書くのですか?
不破:令和4年度バージョンはそうしたいと思っているのですが、今年度は教員だけでやっています。教科書のこのページはSDGsの何番の目標に関わっているというイメージで、子どもたちがもうすぐ何番の話があるとか、これ実際の生活にもあるとか話題づくりになればいいなと。
森山:子どもたちの日ごろの会話に、SDGsの目標が出てくるのですよ。子どもが何かいったことを、仲間がそれ何番守ってないわというのが当たり前に。そういうところにつながっていくのかなと思いますね。
田中:確かに、いいきっかけになると思いますね。校舎を見渡せば、いろんなところにSDGsにつながる二次元コードがぶら下がっている。ありとあらゆるところにといっても過言じゃないくらいで。自分事というのは簡単ですが、なかなかこうならないのが現状で、やっぱり目にとまるところに置いておくのが大事なのでしょうね。
不破:子どもが興味を持てば、大人は勝手についてくると。
田中:SDGs推進ネットワークへの入会が令和3年1月ですから、まだ取り組みを始められたばかりなのに、このアクティブさがすごいなと思っています。SDGs推進ネットワークを一つのきっかけにされて、そこからいろんな気づきが出てきて、それが発想力や行動力につがっていく。本当に楽しみですよね。
子どもたちが気がねなく、
いいたいことがいえる学校にしたい。
不破:実は、私たち今年度異動してきた人間でして、1年生の担任で、1年生の子どもたちからどんどん持ち上げていきたい。
田中:それはすばらしい。ずっといた人たちに気を使いながらというのが、世の中の風潮としてあるなか、良い方向に変えていきたいと、どんどん発言していくことで、住みよい環境につながっていくと。
不破:子どもたちが、いい意味で気がねなく、いいたいことがいえる学校にしたい。これは、竹鼻中学の教育目標にも沿っていると思います。自分で未来を切り拓いていく子どもたちをどうしたら育てられるか、やっぱり思ったことがいえるとか、自分事としていろんなことを考えられるとか、そういったところにつながっていきますよね。冬休みに、これに気がついたのですよ。1月4日の朝一番に校長室入っていって、SDGs推進ネットワークというのを見つけたのですよ。これに入りませんかといったら、うちの校長もすごくて。よし、じゃあ、君を推進プロジェクトチームのチーム長にするから進めてくれと。それから、「竹鼻SDGs通信」を書いてサーバに上げて、あとは、みなさん見てくださいって。気がついたら、周りがSDGsだらけみたいな。図書室にもSDGsコーナーを設置して、お昼の校内放送でも図書情報委員会とコラボして、SDGsの目標の1番から順番に、毎日、給食を食べながら、みんなでYouTubeを見ています。
田中:今日の講話で少しご紹介しました和光会グループさんとか三承工業さんも、SDGsをやり出してから全国的に有名になって、和光会グループさんに、この間、日経ヘルスケアから取材がきていました。和光会グループさんや三承工業さんにもこれからRe:touchにご協力いただくのですが、私もSDGsがなかったらお知り合いになれなかったと思います。本当に一気にいろんなことが始まって、実際に何が起きているかというと、今まで会ったことのない企業と手を組んで、建設業界と印刷業界で、印刷の仕事でコラボレーションするわけではなくて、まちづくりをどうやろうかということが進んでいたりとか。SDGsから派生していく流れができてきましたね。
不破:学習指導要領は10年に1回、教科書も5年に1回しか変わらないので、私たちが常に新しいものを取り入れていかないと、時代がどんどん先に進んでいってしまいます。
子どもたちがいろんなところに、
新しい芽を出してくれれば。
田中:取り残されているということは絶対ないと思いますが、学生のアクティブな動きがあちこちで起きてきて、さっきの国際シンポジウムもそれをどんどん応援していこうという動きになっています。子どもたちのパワーの方が、世の中を変える力を絶対持っていると思います。
不破:あるものとあるものをくっつけて、新たなものを生み出す力を、子どもたちってすごく持っているのです。私たちが、古いもののいい部分は残しつつ改善できるものは変えていってやらないと、子どもたちのその芽を摘んでしまうことになりかねない。子どもたちが新しいものをどんどん入れながら、古いものと混ぜて耕しながら、いろいろなところに新しい芽を出してくれればいいかなと思います。
田中:生徒が、羽島市の総合計画を見るんですよね。
不破:生徒にタブレットを渡した時、先生、第六次総合計画のリンク教えてっていって。市役所の方も、中学1年の13歳の子どもが読むとは、想定していなかっただろうなと。
田中:ところで、課題はどうですか?今ちょっと行き詰っているなとか。
森山:子どもたちがさっき田中さんに聞いておいてといっていたのは、服を送りたいといっている子が、どうしてもクラスや学年に温度差があったりして、協力者を募らないとその子だけで終わってしまう。子どもたちは、持続可能なことをしなければならないと当たり前にいうので、どうやったらいろんな人を巻き込ん動けるんですかって。
田中:結局は、継続させるということが一番根っこにあって、それにどれだけ魂を込められるかというところだと思います。例えば、この活動を学校中に発信をするとかね。共感してくれる人が、1人2人、それが4人5人、10人20人になって。世の中みんな振り向けようなんて無理なので、全員振り向かなくてもいいじゃない。熱い想いを持っている人がたとえ少数でも、私は構わないと思っていますよ。
不破:本当におっしゃる通りです。教育者であっても、みんな同じ熱量は無理な話なので、そこを上手に調整していく力を、子どもたちに身に付けさせるべきなのかなと思います。
田中:そこは、多様性のある考え方や生き方というのがあって、みんな尊重しましょうよと。それはさっき先生がおっしゃった、強制したくないというところにつながっていると思います。今日、竹鼻中学校ってすごいなと思ったのは、手を挙げる生徒がすごく多い。でも、みんな手を挙げなかったからといって、意見を持っていないのかといったら全然そんなことはなくて、当てて聞けばすごくいいことを考えていて、いえばいいじゃないというのですが、私そんなの絶対無理とかいう子もいる。それを閉ざしてしまうと、それこそ自由な発想を閉ざしてしまうことになるので。
不破:ただ、ありがたいと思うのは、竹鼻中学校では、管理職が本当によく理解してくださる。そして、私たちが恵まれているのは、子どもたちの前向きな姿勢というか、新しいものを出した時に、まずはやってみようという純粋さ。私たちの原動力になっていますね。
田中:そうですよね。こうやって先生が認めてくれるから、私も自信が出てきたとか、子どもたちも思っているんでしょうね。
毎日が楽しい。子どもたちに、
楽しんでいる姿を見せたい。
不破:子どもたちが自分で何かを見つけてきて発信できるように、この3年間で育っていくきっかけを私たちはつくっているだけで、子どもたちに種を蒔き続けていきたいなと思います。
田中:コツコツやっていけばいいので。あまり背伸びしすぎても、続かなくなってしまう。少しがんばって達成したというようなさじ加減でいいんじゃないですかね。
不破:私たちは学校教育なので、4番を中心に回っていて、当然、質の高い教育をしていくべきだし、しなきゃいけない。そのなかでSDGsというものを子どもたちに気づかせる部分から入っていますが、そこから子どもたちが4番以外の視点でこういうことやりませんかというところに、来年度いきたいなと思っています。私たちも、すごく若い刺激を受けながら、日々学んでいて、毎日楽しいですよね。疲れた学校の先生を見て、子どもたちは大人になりたいと絶対思わないじゃないですか。やっぱり楽しんでいる先生の姿を見せたいなと思います。
田中:すばらしいですね。今日は、本当にありがとうございました。
TOPIC
(※現在、新しい教科書に合わせて調整中です。)
Company PROFILE
学校名 | 羽島市立竹鼻中学校 |
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所在地 | 〒501-6241 岐阜県羽島市竹鼻町3176番地 |