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両親への想いから経営コンサルタントとして起業
田中:栗田さんは現在、大垣市で企業コンサルティング会社の代表をされていますが、まずはその設立の背景など、お聞かせいただけますでしょうか?
栗田:設立は2014年4月2日になります。きっかけは、両親の存在が大きいです。私は大垣の商店街で飲食店の娘として生まれ、父が3代続いた和食のお店からフランス料理店に事業転換して30年ほど続けてきましたが、車社会となり商店街が衰退し、お店を閉めることになったんです。朝早くから遅くまで働く両親の姿を見ながら育った私にとって、非常に残念だったのですが、いつか恩返しをしたい、また大垣の中小企業のお役に立てることをやりたいと思って、社労士事務所に入って社会保険労務士の勉強を始めました。
当初はあまり知識もない中、私にできることは?と考えた時に、お話を聞くことならできると思いまして、経営者の方のお話を聞くことからはじめました。そうしたら、労務問題とか補助金とか事業展開についてだとかいろいろとご相談いただけるようになりまして、その度に自分で勉強してという感じで、人事労務コンサルタントとしていろいろと経験させていただきました。
田中:栗田さんの人柄もあって、さまざまな企業よりご相談があったかと思います。
そんな中で、どういった部分を大切にされてきたのでしょうか。
栗田:私が一番追究したのは、経営者の方が本当に幸せだと思えるのはどんな状況なのだろうか、という点です。売上が上がる、給料が多くなる、従業員が増えて規模が大きくなるとか、そういうことだけでなく、経営者としてはその会社で何を実現したいのか、そのビジョンに向かって社員の皆さんと一丸となって立ち向かい、その結果がどうであれ、「やってよかった」「すごく幸せだった」とか、「すごく良かった」と言ってもらえる瞬間に見せてくれた最高の笑顔を見て、これが経営者の幸せなのではと思ったんです。条件や環境が揃えば、事業規模を問わず、経営者の方が幸せになれるんじゃないかと思い、ビジョン型組織プログラムを作り上げました。
このプログラムに当てはめていくと、会社の理念、ビジョン、ミッション、そして社員の方と一緒に参画していく組織がつくれるようになったんです。
田中:なかなか言葉通り、簡単ではないかと思いますが、経営者のビジョンを社員に浸透させていって、社員一丸となっていくのが理想ですね。
実際にサポートされていていかがですか。
栗田:ある電気工事会社さんのお話なのですが、社長が体調を悪くされ、ご家族が継ぐことになりまして、事業を続けていく中で、資金繰りが悪化し、従業員も諦めてしまっていたのですが、後継者の方がビジョンを示し「みんなで乗り越えよう」という強い想いを伝えたら、そこから会社が一変し、何とか乗り越えられたということがありまして、やはり本当に目指したい方向を経営者の方が本気になって示すということは、従業員さんの心をこんなに変えることができるんだなってすごく実感した出来事があったんです。
また、立命館大学の関教授にこのプログラムを見ていただいたんですが、通常の会社は過去の流れを踏襲して経営している、でもこのアプローチは過去の流れを一旦断ち切って新しい未来をつくり出す、そこに組織を乗せるというのが、今までのコンサルティングとまったく違うと。過去のしがらみとか栗田さんには全く関係ない、そんなところが本当に強いところだな、と言われたんです。
田中:でも、それってとても難しいことだと思うのですが、今までの流れを断ち切って変わることを恐れる人の方が多いですよね。
栗田:そうなんです。人は変わりたいって言いながら変わりたくないので。そこは経営者の方に覚悟を決めてもらうようにとことんやりました。せっかくこんなに人生を懸けてやっている事業、こうありたいですよね、それには自分も覚悟を決めて真剣に向き合うことが大事、そうするとやっぱり人って向き合い方が変わるんですよね、従業員さんも。
田中:理屈では分かっているのですが、それが今の時代の経営のあり方だということを。でもその本気度が社員の方に伝わるかどうかが大きなポイントですね。
栗田:確かに、経営者の方をどう変えるかというのが最初の課題です。自分自身がどうありたいかというところを見つめていただいて、なりたい自分になっていく成長の過程や、従業員とか取引先の方に、変わったねと思っていただけるように、試行錯誤しながら進めてきました。
大垣のために、地域のために、
女性起業支援から事業承継まで
田中:それで、ウーマンアントレプレナーズという社団法人を立ち上げられた、そして不易の会を設立されたとのこと、この辺りのお話もお聞かせ願えないでしょうか。
栗田:実は私がちょうど独立した時、東海地区では、私のような子持ちでこのようなハードなコンサルティング事業をするような女性は少なかったんです。その頃ちょうど女性創業の機運が高まってきていた時期で、私にその経験をぜひお話してもらえないか、という依頼があったのです。ということで、官公庁や外郭団体などから、女性創業セミナーの講師に呼んでいただけるようになりまして、それによって徐々に女性創業家として知られるようになりまして、今では800人くらいの女性創業を支援させていただいています。それで岐阜県のよろず支援拠点とか、三重県の専門アドバイザーになったりして、ウーマンアントレプレナーズという一般社団法人を立ち上げたという経緯があります。結果、創業から廃業まで一貫してご支援できる体制を取らせていただいています。その他にもマッチングサイトを展開したり、そういったミックス型事業承継と創業とのサービスをできるようになったのも大きく変化した点かなと思っています。
田中:すごいですね。文字通りゼロから会社を立ち上げたということですよね。その上で不易の会という形になるんですね。
栗田:それから事業承継に携わるようになってから、私が1社1社ハンドメイドでコンサルティングしていたのですが、コンサルに入った会社は、会社が安定して承継できてよかったのですが、地域の周りを見ると、A社は後継者がいなくて、廃業、B社は業績が悪化して、事業をやめるなどの事実を目の当たりにして、事業承継は地域ごと承継される仕組みをつくらなければ、終わらないのだと感じました。それを私一人で全部対応するのは無理だと限界を感じまして、それで「不易流行 THE 実学実践会」を立ち上げて、西濃・大垣・岐阜の経営者の皆さまにご協力いただきまして、課題解決が必要なときには専門家の方をアサインさせていただくなど、そのようなスキームをつくりました。
田中:すごいですね。岐阜と大垣と西濃のミックスってあまりないですよね。
栗田:そうですね、なかなかこの組み合わせは少ないですね。大垣のまち、私は大好きなんですが、一つ弱点といいますか、外の世界にあまり求めていかない、自分たちの世界でまとまってしまうというきらいがありまして、なかなか変われないというところがありまして、それだったら不易の会が、全国から、世界から、大垣とアクセスできる窓口になれば良いと思い、定期的な講演会などを大垣で開催したりして、大垣に居ながらにして新しい情報や視野を感じることができるようなサービスを一つの柱にしようとした背景があります。
田中:本当に結構継続的に発信されてますし、行事も開催してますし、その不易の会に協力している顔ぶれを拝見しても、本当に素晴らしいですね。
栗田:皆さんが協力してくださるのは大変ありがたいです。一人で頑張ればいいという世界観から抜け出せたのが大きな転換点で、特に今やっている3つの事業は、私一人ではできることではないので、いろんな人にお力添えをいただき運営していくような感じで、本当に日々、勉強、反省の毎日です。
不易流行 THE 実学実践会×SDGs推進ネットワークで
3つの事業を展開
田中:現在、新しい3つの事業を展開されているわけですが、この事業に着眼されたのはどんなところからですか?
栗田:岐阜県のSDGs推進ネットワークという存在を知って、不易の会もそこに団体として入ろうというお話になりまして。そんな時にSDGs推進ネットワークから補助金が出るという情報を得まして、会社を継続していくために、また地域を継続していくために地域課題を事業化するすごくいいチャンスだと思って、会員企業と相談して3件の申請をさせていただいたのが始まりです。 会員企業の「スイトトラベル」様がこのコロナ禍で、タクシーでお客様や飲食店から連絡を受けて配車をする事業をしてらっしゃいまして、ちょうど京都のタクシー会社がスマホで簡単にデリバリーを注文できる仕組みを導入していたのを聞いて、スイトタク配という事業を立ち上げたのが一つです。 さらに、揖斐川町坂内にある道の駅の指定管理をされている「久保田工務店」様より、このコロナ禍で商品開発したジビエ料理とかお土産が余ってしまうというとご相談があり、だったらそのような特産品を活性化する事業をしようということで2つ目の事業がスタートしました。こちらに関してはマルシェという形態でテストマーケティングをして大変好評を博しまして、次のマルシェも是非呼んでほしいなんてお店も出てきて良い循環が生まれてきたんです。隣の道の駅でもやりたいということで、この地域が大きく変わってきました。
田中:素晴らしいですね。ブランディングにもなって、地産地消も活かしながら、本当にいいモデルだと思います。そして、もう一つは。
栗田:もう一つは、アライアンス型事業承継というもので、例えば後継者の育成とか、後継者選び、その右腕はどうするのかなど、いろんな要素が重要になってくるのですが、その8~9割が税理士先生に相談するようなのです。が、その複雑な一連の問題を税理士の先生一人で解決できるのかっていうとなかなか難しい、いかにマッチした専門家をアサインするかというのが非常に大切です。そこで専門家の先生と3~4人のチームをつくって、事業承継がうまくできるようなアライアンス型事業承継プログラムというのをつくりました。
その一番のポイントは、承継後も必ず続いていく会社づくりをするということなんですが、最初に経営者の方、後継者の方、専門家の先生たちで、この会社をどうしていくのか、承継後も続けていくためには何を断ち切ってどう変えていく必要があるのかとか、そういったことを最初にセッションします。やはりリブランディングしていかなければいけない場合は、ブランディングの先生、Webの先生やマーケター、中小企業診断士の方を呼んでとか、その企業のステージに合わせてやっていくというのがアライアンス型事業承継というスタイルなんです。
田中:これは結構パワーが必要になり、1案件ごと真剣勝負ということになりますね。本当に3つとも大変だと思いますけど、これから先、どういったところを目指されているんでしょうか。
栗田:私の最初のスタートがやはり両親への想いだったので、中小企業の経営者の方々に幸せになっていただきたいという想いが常にありまして、そのためには企業にも地域にもがんばっていってほしいというのがあります。そのサービス展開を基軸として展開していきたいと思っています。たぶん私の天職だと思います。
田中:私も大垣が好きですし、大垣の良さとは何か、地域の方ももっと気づくべきだと思います。お互いに大垣を盛り上げて行ければと思っています。本日は、ありがとうございました。
TOPIC
大垣の企業と地域の手により
実現させる「不易流行の会」
https://fuekiryuko.jp/
Company PROFILE
企業名(団体名) | 株式会社Allied(アライド) |
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代表取締役 | 栗田 恵世 |
本社所在地 | 〒503-0802 岐阜県大垣市東町1-3 ユニテツク第2ビル 2階A室 |
事業 | 経営コンサルティング |