Movie
“消費”を通じて、女性と社会をつなぐ
田中:まずは、クローバ!がどのように活動しているか、お話しいただけますか?
島田:NPO法人クローバ!は「岐阜で暮らす女性に、自分らしい暮らし方や働き方を見つけてほしい」という思いで、10年前に立ち上げた団体です。岐阜の主婦やママ、女性が交流をもち、学びや楽しみを見つけるきっかけになる場所を提供することで、女性の活躍や充実した日々を支援したいと、「岐阜最大級のウイメンズネットワーク」を築いて、さまざまな活動を展開しています。
田中:クローバ!さんが手がけている事業を拝見しましたが、女性が手作りの品を販売するハンドメイドマーケットや起業支援など、実に幅広いことに驚きました。特に企業との協働に力を入れていると聞きましたが。
島田:活動をする中で出会った企業の中には、「女性消費者の目線で、商品やサービスに対する意見を聞きたい」という声が多くありました。そこで、アンケートや座談会で集めた約3000人の女性会員の声を企業に届け、情報発信や商品開発などに役立ててもらう活動が、事業の大きな柱の1つになっています。
田中:女性の視点や発想をまちづくりや製品開発など多彩な分野で生かしているんですね。ちなみに、SDGsに関する活動を始めたのには、何かきっかけがあったんでしょうか?
島田:私は常々「女性の社会貢献の1つは“消費すること”」と思っているのですが、女性の「こういう商品をつくってほしい」「こんなサービスがあればいい」という声は、企業の商品開発やサービス向上に大きな影響を与えます。だとすれば、女性が「地球にやさしい商品が買いたい」という声を発すれば、企業もその声に応えてくれるはずだと思ったんです。実際に現在、地元工務店やショッピングモールなどさまざまな企業とパートナーシップを結び、女性の声を届けています。
田中:NPO法人というと、行政との事業を行っているイメージが強いですが、そうした思いがあって、企業とのパートナーシップを積極的に構築しているんですね。
島田:もちろん自治体と連携した事業も大切な事業の1つですが、社会を変えるためには、民間企業の力がとても大きいと思っています。そのため、設立当初から自治体だけでなく企業とのパートナーシップに力を入れてきたという経緯があります。
田中:それはおっしゃる通りだと思います。だからこそ、私たちも自治体や企業という枠を越えたパートナーシップを築きたいと考えています。しかも島田さんは、自治体や企業だけに留まらず、個人で活動されている女性とのパートナーシップも活用されていらっしゃいますよね。
島田:そうですね。クローバ!の事業は、フリーランスで活躍している多くの女性に関わっていただいているのが、特徴の1つです。今回、私たちが女性や企業とのパートナーシップを結んできたことをまとめた『CoReColor(コレカラー)』というSDGs冊子をつくったんですが、ここでもコピーライターの船戸梨恵さんに、制作の上でご協力をいただいています。
岐阜の女性100人以上の声からつくる
等身大のSDGsマガジンを
CoReColor(コレカラー)
クローバ!では2020年12月に、女性に分かりやすくSDGsを伝える冊子『CoReColor』を発行。タイトルも、「一緒に」という意味の接頭語の「Co」、「再び」という意味の「Re」に、「彩り」を意味する「Color」を用いて、今一度、多くの女性とともに充実した社会をコレカラつくっていきたいという願いが込められている。
田中:この冊子のいいところは、SDGsを誰でも分かるように書いてある点だと思います。SDGsって一般の方には「難しい」というイメージがあって、「自分には関係ない」という思いにつながってしまう点が課題だと思っているので、こういう視点じゃないとなかなか普及しないと思います。
島田:女性に対しては、やはり生活目線でどうしたらSDGsに取り組めるかを伝えることが大切。その点、私の思いを船戸さんがうまくカタチにしてくれました。
田中:そもそもこの冊子をつくろうと思ったきっかけは?
船戸:私はこれまでもSDGsに関する記事を執筆してきましたが、やはり多くが企業向けで、一般の方にはまだまだ浸透していないと感じていました。特に地域の女性に対して、分かりやすくSDGsを伝える媒体を見かけないなと。今はネットで多くの情報を得る時代ですが、興味がないとなかなかその情報にたどり着かないという面もあります。そこで、女性がよく足を運ぶショッピングモールなどに、「なんだろう?」と手に取ってもらえるような冊子を置けば、隙間時間に読んでもらえるのではないかと思いました。
田中:なるほど。それで島田さんとの連携につながったんですね。
船戸:クローバ!さんの強みは、やはり3000人の女性会員がいること。この会員さんに生の声を聞けることは、大きなメリットです。実際、SDGsの認知度を知るためアンケートをお願いしたところ、すぐに100名以上の回答をいただき、女性の声から生まれた「等身大」のSDGsマガジンをつくることができました。
田中:このアンケート結果は、私も興味深く拝見しました。中でも、ほとんどの人が「SDGsに取り組んでみたい」と回答しているんですよね。
船戸:「やってみたいけど分からない」というのが、皆さん抱えている思いなんです。でも、衣食住に関する消費活動は、家計にも大きく関係し、女性の関心が高い部分です。その消費活動がSDGsにつながっていることをかみ砕いて伝えられたら、日々の行動も変わるはず。女性の変化は社会の変化にもつながります。
田中:やはりSDGsを浸透させるためには、敷居を下げなければいけない。それを女性という目線にこだわって、生活目線までSDGsを近づけている点は、すごくオリジナリティがあると思います。
島田:この冊子に紹介している内容も、以前からクローバ!とパートナーシップを築いてきた企業の取り組みが中心。それを個人で活躍している女性とのパートナーシップで冊子にできた。つまり、クローバ!だけではできない事業です。これからも多くの人と連携して、2号3号を発刊したいと思っています。
田中:この冊子は、ショッピングモールなどで配布されているんですか?
島田:はい。県内のショッピングモールに設置してもらうのはもちろん、クローバ!が毎月開催している、女性の作家によるハンドメイドマーケットでも配布します。大きな企業だけでなく、私たち1人1人もSDGsに関われる、関わらなければいけないんだということを伝えていきたいですね。
田中:私も学生にSDGsを伝える活動をしていますが、学生が学ぶSDGsって世界規模の話が中心なんですよ。でも、地元の課題とか日々の暮らしでできることっていう視点がないと、自分事化できないんです。この冊子にはそのヒントが詰まっていて、それを親世代の女性が見てくれるのは大きいと思いますね。
女性も社会も「持続可能」であるべき
田中:女性にSDGsを伝える冊子『CoReColor』をつくる中で、新たな活動もスタートしたと聞きました。その話もぜひ教えていただけますか?
島田:はい。女性会員にアンケートを行った結果、SDGsゴールの中で最も関心が高かったのが、「健康」についてでした。会員は子育て世代が中心なので、私も少し意外でしたが、今回のコロナ禍で健康の大切さは誰もが実感したところ。しかし一方で、がん検診の受診率が大幅に下がったという現状もあり、何か女性の健康に関する活動ができないかと考えたんです。
田中:それが乳がん検診の啓発だったわけですね。すでに2021年4月に「ぎふピンクリボン実行委員会」を新たに立ち上げられたと聞きました。
船戸:はい。この取り組みは、以前からクローバ!とパートナーシップを築いていたフリーアナウンサーの平松亜希子さんとの会話からスタートしました。平松さんは愛知や三重で行われているピンクリボン運動にも携わっていて、その中で「岐阜にはそうした啓発イベントが少ない」と感じていたそうです。その話を聞いて、だったら私たちで始めようと、船戸さんや実際に乳がんを経験したスタッフも巻き込んで、実行委員会を設立しました。
平松:私は三重県出身ということもあって、最初は三重県のピンクリボン運動で記事のインタビュアーやイベントのトークショーを手がけるようになり、それがきっかけで名古屋のピンクリボン運動にも参加させていただくようになりました。岐阜で私たちが頑張ってピンクリボンを盛り上げて、最終的には岐阜・愛知・三重の3県でその取り組みをつなげていきたいと考えています。
田中:いやー、お聞きしていると、SDGs冊子もピンクリボン運動も、息の合うその道のプロフェッショナルと手を組むことで、新たな動きが生まれている。それは皆さんならではの動きかもしれませんね。
平松:そうですね。女性って、普段から仕事・家事・育児に追われる中で、なかなか自分の健康を振り返ることが難しいのが現実です。でも、私自身もピンクリボン運動に関わってから検診を受けるようになり、そうした方が1人でも増えるといいなと思っていたので、女性会員を多く持つクローバ!さんとなら、活動を広げていけると感じています。
島田:ピンクリボンのロゴに添えた「まずは、私が持続可能に!」というキャッチコピーも、船戸さんが考えてくれたんですが、まさにそうだなと思っています。体が健康でないと、仕事も家庭もこうしたいい活動も続けていけないなと。
船戸:ちょうどSDGs冊子をつくっていた時にお話を聞いて「持続可能な社会をつくるには、自分も持続可能な状態にないといけないんじゃないか」と思って。やはり女性の元気って、家庭や社会の元気につながりますからね。
平松:ピンクリボンは乳がんの啓発ですが、これを1つのきっかけとして、女性に健康について考えることを促す活動をしていきたいと思っています。もちろん女性を入口に、男性やお子さんにも、健康について考えていただきたいですね。
田中:SDGs冊子もピンクリボン運動も、岐阜にはなかったというところからスタートされていますが、やはり岐阜って最初の一歩を踏み出せない奥ゆかしいところがあると思います。こうした活動を行う秘訣はどこにあるんでしょうか?
島田:私は常々、その時代のニーズや一時的な思いだけでなく、長く継続できる活動をすることを最も大切にしています。そのために不可欠なのが、企業や自治体、そして平松さんや船戸さんのような方とパートナーを組むことだったんですね。ただし、それはボランティアじゃなく、お互いにウィンウィンの関係であることがとても重要。いい戦友を得ることが、一番の秘訣だと思います。
田中:今は、企業も同業者同士が手を組んで新たな流れをつくるような世の中です。ぜひ皆さんのような女性のパワーで、岐阜からこうした動きを起こしてほしいですね。私も皆さんと今日初対面ですが、お話していると私も「ぜひ一緒に何かやりましょう!」という気持ちになります(笑)。
島田:ピンクリボンについても、他県の事例も参考にしながら、いろいろな人や企業に参加してもらって、岐阜ならではの活動も広めていきたいと思っていますので、ぜひ一緒に!
TOPIC
Company PROFILE
企業名(団体名) | NPO法人クローバ! |
---|---|
代表者名 | 理事長 島田 貴子 |
所在地 | 〒502-0882 岐阜市正木中1丁目2番1号 マーサ21ショッピングセンター内 |
事業 |
|