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創業以来、地域の工務店として、
住民とともに歩んできた70年
田中:久保田工務店さんは創業70年を迎えられ、長年、地域の老舗工務店としてご活躍されてきています。まずは会社の概要を教えてください。
久保田:私たちの事業の中心は、橋や道路を造る公共事業です。先々代である私の祖父が始めた会社ですが、曾祖父の代に揖斐川町の建設業の礎を築いたのが創業のきっかけです。当時は橋や道路を造ることよりも、町の再生や山間地域を守ることに力を入れていました。会社が揖斐川町揖斐川地区にあり、これまで一緒に協力し合ってやってきたのが、この地域です。町を整備したり困り事を解決したりと、ずっと住民のみなさんとタッグを組んでやってきたので、久保田工務店が地域と深い結びつきがあることは、昔から認知していただいています。
田中:久保田さんは社長に就任されてから、まだ1年も経っていないですよね。
久保田:はい。昨年の7月に社長に就任しました。先々代は2歳の時に亡くなっているので実際に会った記憶がないのですが、先代である父の姿はずっと見てきたので、ものすごく地域を大事にしてきた会社であることは、私もいつの間にか強く自覚していました。
田中:自分の使命として、もともと継ぐという思いがあったのでしょうか。
久保田:継ぐことは私の中で大きなことではなく、自然と決心できたことで、そのためにずっと準備もしてきました。ただ、30代までは自分自身を高めたり知識を得たりする時期でしが、40歳を超えて、ここからは培ってきた力を披露していく時だと思っています。
田中:揖斐川町は、ソーシャルイノベーションをすごく実直にやっている地域だという認識があります。地元の大人が中高生に揖斐の魅力を伝える対話型プログラム「揖斐ジモト大学」も面白い取り組みですよね。久保田さんも講師として参加されています。
久保田:揖斐の人って根本的に揖斐が好きなんですよ。そんなハートがあるがゆえに、小さい町ですが、地域を盛り上げようとする取り組みは多いです。住民性というか、みんなが町に対して熱い想いを持っています。
田中:協力して盛り上げようという認識が、自然と備わっているんですね。みなさんにパッションがあって、団結力もありますよね。
お客様の喜んでいただける姿が原動力
田中:今回、道の駅の指定管理の話が来たときは、二つ返事で受けられたとお聞きました。
久保田:そこは自分の中で迷いなくスッと返事をしていました。建設業や公共事業というのは、地域の支えがあるからこそできることです。何か恩返しをしたいという気持ちが大きかったですね。
田中:住民の方々の反響はありましたか。
久保田:はい。昨年11月に道の駅を会場にして「さかうちマルシェ」を開催したのですが、約800人もの来場者に集まっていただけました。「こんなに坂内に人を集められるんだね」という驚きの声や、「久保田工務店が管理運営やるようになってから道の駅が変わった」というお褒めの声を周囲の人からいただき、喜んでいただけていることを実感しています。
田中:まだ立ち上がったばかりですが、これからどうしていきたいですか。
久保田:これは初めから構想していることなのですが、目標が2つあります。1つ目は、現状は滋賀県を往来するための通過点になってしまっているので、目的地となるような道の駅を作ることです。そしてもう1つは、この道の駅をプラットフォームとして坂内を回遊できるように、周囲にも目的地となるような整備や施設を作りたい。それはアクティビティであったり、宿泊施設であったり、地産地消のグルメだったりするかもしれません。お世話になってきた坂内という地域を総合的に活性化できる仕組みを「さかうちモデル」として構築し、ゆくゆくは同様のモデルを揖斐川町の他の地域にも展開していきたいと考えています。
田中:今、地産地消という言葉が出ましたが、今後地域の方々に協力してもらうことにはどんなことがありますか。
久保田:例えば道の駅の物販コーナーでは、山菜や山芋、米などをまだ全然売り出せていないのが現状です。原因は、光るものは持っているのにうまく魅力を発信できていないこと。よりよい見せ方やプロモーションの方法を探るには、自分たちの知識だけではまったく足りないので、みなさんの力をどんどん借りていく予定です。それだけでなく、道の駅でふるまうメニューを地元の飲食店にオーダーしたり、アクティビティをキャンプ事情に詳しい住民に依頼したりと、少しずつ地域の中に協力者を得ることでコミュニティの輪を広げていきたいです。
田中:ECサイトも立ち上げる予定だと伺いました。
久保田:今、公開に向けて動いているところです。道の駅のリニューアルに伴い、メニューの刷新や組み換えを行っていて、まだ序盤という段階です。坂内地区が持っている資源とそれをアウトプットする場所の両方を常に動かしながら、次の取り組みにつなげていきたいです。そしてもう一つ、揖斐の方から坂内に人の流れを引っ張るアンテナショップ的な場所を作りたいとも考えています。
田中:まさに「さかうちモデル」ですね。SDGsでいうと、17番の「パートナーシップで目標を達成しよう」が該当しますし、食の安全やダイバーシティといったことも関連してくるのではないでしょうか。本当にこれからが楽しみですね。
久保田:そうですね。楽しみですし、実際に楽しいです。本業の建設業ももちろん大好きですが、お客さんや地域のみなさんの反応が直接見られる取り組みもすごく楽しいです。
これからも、“地域のために”を第一に
田中:SDGsに関わるきっかけは気軽なところからでいいと思うのですが、深く追求すると、本業をもって解決するというのがキーワードになりますが、久保田工務店さんの取り組みも、やはり本業の延長線上にあるのでしょうか。
久保田:今は本業の建設業と、道の駅の管理運営という社会貢献事業は切り離して動いています。昔から会社の存在意義をずっと考えていて、「社会のためにある会社じゃなければ、存続しない」と確信しています。だからこそ70年も続いてくることができたのだと。自社の利益ばかりを追求していたら、今の姿はないですから。まずは地域のためにできることをしようと。
田中:地道にやってこられたからこそ、70年の歴史を経ることができた。すごいですね。
久保田:建設業という枠組みの中でも、地域のためにできることはたくさんあるので、今後は本業とも連動するような地域貢献に取り組んでいきたいです。
田中:社会の問題を解決することが事業モデルになって、“楽しい”が事業の推進につながれば、こんなにいい絵面はないですよね。本業を中心としながら、自分たちもしっかり潤っていく。社会を良くすることがきれい事だけじゃないところで着地すると、「やってきて良かった」につながるはずです。難しいところですが、まずは行動を起こすのがすごく大事だと思っていて。久保田工務店さんは管理運営を始められて、これから住民の方々の声もたくさん聴くでしょうし、それに伴って色々な発見があると思います。住民の方々の期待を背負っていらっしゃるので。
久保田:今回も「坂内のことなら久保田工務店に」ということでお声かけいただきました。誰にでもやらせてもらえることじゃないので、本当にありがたいです。この取り組みを通じて地域を元気にして、少しでも恩返しできたら嬉しいです。
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Company PROFILE
企業名(団体名) | 株式会社 久保田工務店 |
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代表取締役 | 久保田 智也 |
所在地 | 〒501-0619 岐阜県揖斐郡揖斐川町三輪521-1 |
事業 |
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