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Interview
SDGsの先駆者に訊く

Re:toucher 04
大垣の街から、
日本を元気にしたい。

大垣ビジネスサポートセンターGaki-Biz(ガキビズ)(岐阜県大垣市)

センター長 正田 嗣文さん
インタビュアー Re:touchエグゼクティブプロデューサー 田中 信康

Re:toucher PROFILE

正田 嗣文さん

1980年生まれ。埼玉県出身。大学卒業後、エイチ・アイ・エスに入社。都内営業所・本社勤務を経て、ヨーロッパに6年間赴任し、帰任後、会長兼社長の澤田秀雄さんが設立した澤田経営道場に選抜され、ハウステンボスのパーク統括本部副本部長兼イベント部部長としてV字回復の基軸となるオンリーワンのイベントを実施。2018年から大垣ビジネスサポートセンター長。

SDGsターゲット
  • 08 働きがいも経済成長も
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです
日本のおよそ真ん中辺り、岐阜県の南西部に位置する、水の都・大垣市。ここには、古くからの歴史・伝統が息づき、多彩な文化が根づいている。この地には、それらの文化を継承する中小企業が多く存在しているが、このご時世、企業継承をするのもなかなか困難な企業が多く存在することも事実。そのような中小企業を支援するため平成29年に設立されたのが、大垣ビジネスサポートセンター「Gaki-Biz(ガキビズ)」。これまでに数多くの実績をあげ、大垣のまちを元気にしている。

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ガキビズとの不思議な出会い

田中:そもそもガキビズとはどのようなものですか?

正田:元々は中小企業を支援していく機関をつくって、地元でがんばる中小企業を、お金を掛けずに知恵とアイデアでサポートしていきましょうと、静岡県富士市で始まったビズモデルです。ビズモデルとは、全国20箇所以上に広がる自治体主導の中小企業支援の取り組みのこと。それがだんだんと成果をあげて、全国各地に広まっていき、それが大垣の地でも始まったというのがガキビズで、ガキはもちろん大垣のガキです。他にもこの近くでは岐阜県関市のセキビズ、愛知県岡崎市のオカビズなどがあります。

田中:そこにどのような経緯で正田さんが来られたのですか?

正田:このガキビズが発足するにあたり、責任者を募集していたのをたまたま見て応募したのがきっかけです。私は埼玉県出身なのですが、これまで東京で旅行会社に勤めた後、7年ほど海外勤務、それから某テーマパークの経営再建に携わり、そこで中小企業の魅力を知りました。この方々に力を付けてもらいたい、そのお役に立ちたい、と思ったのがきっかけでした。200人近い応募者の中から選ばれたのですが、本当に不思議なご縁としか言いようがないですね。それが3年ほど前の話になります。

田中:大垣の街はいかがですか?

正田:大好きです。いい人ばかりでおもしろいと思います。だから全然困ったことはないです。皆さんと飲みに行く機会(今は自粛期間ですが)もあれば、遊んでいただくこともあり、こんなよそ者を快く受け入れる懐の深さを感じました。だけど、それが見えてこないところがもったいないというか、外に発信する方法をもう少し上手にすれば、もっといい地域になると思うのですが…。

岐阜の大垣だからこそ生まれたガキビズモデル

田中:大垣に来て3年、いろんなことを実感なされていると思いますが、この地域ならではの課題とか見えてきていることはありますか?

正田:私は皆さんの悪いところを直しましょう、ではなく、いいところを伸ばしていきましょう、という考え方なので、この地域のいいところはどこですか、ってお話させていただくことが多いのですが、まず一つ思うのが、やる気のある事業者が多いということ。そしてもう一つはつながりがあるということです。この大垣という人口16万人という街のなかで上場企業がこれだけあって、大企業がすごいバックアップしてくださる。ビズモデルで企業が入っているのは全国的にも珍しくて、唯一大垣だけなんですよ。

田中:まさに岐阜のローカルモデル、ガキビズモデルとも言えますね。

正田:こういうスタイルはここでしかできないんじゃないかな、と思いますよ。
そしてもう一つうれしいのが、この地域では「創業・起業したい」と挑戦しようとする方が非常に増えてきている、それは実感しています。それもやりやすい環境を皆さんが支援してくれているのだと思いますし、「ガキビズに相談してみたら」と言ってくれる方が非常に多くなっていることにも起因していると思います。最近、女性の相談者が多いというのもうれしい限りです。(起業の)敷居が低くなってきているんですかね。そういうがんばっている人たちをアピールして、その良い連鎖をつくっていきたいと考えています。

田中:ちなみに、これまでの相談件数は?

正田:令和2年10月末の時点で約4,000件、各市町村によって課題も違いますから一概には言えないですが、経営相談に乗っている公的な機関の中では全国トップクラスの数字です。広報費などの予算はありませんので、基本的には事業者さんのフェイスブックとか新聞とかに取り上げてもらったりで、すべて口コミなんです。議員の方の視察とかも多いですし、皆さんによく取り上げてもらっています。

地元大企業のバックアップがある「ガキビズモデル」

田中:何かここから生まれたビジネスモデルとかはありますか?

正田:例えば、僧侶に衣服を販売する法衣店さんが大垣にあるんですけど、そのお店はお客さんが100%僧侶なんですよね。でもそういったお寺でも事業継承の問題が起きておりまして、さらに檀家離れの問題もありまして、お寺さんが継承されなければ売り先も減ってくるということで相談にいらしたのですが、最近ではお寺の方でも自由な方が多くいらっしゃるので、法衣にもおしゃれとか社会的メッセージを載せてみてはどうかという話をさせていただきました。いま、リボン運動って活発じゃないですか、そのリボンをあしらった袈裟を作ってみたらどうって提案してみたんです。購入してもらった売上の一部を団体に寄付するっていう寄付付き商品です。普通に袈裟を売るだけじゃなくて、社会活動や社会貢献につながる、そしておしゃれな感じもする、それだけである有名な僧侶の方に買っていただいて、それを着てTVの特番に出演していただき、全国ネットで放映されて反響があった、なんて話もあります。

田中:それも一つのSDGsと言えますよね。

正田:SDGsもそうなんですが、結局は世界が向かっているところ、トレンドとかをしっかりと押さえながら考えていかないと「何をやっているの」という事になってしまいます。だから私たちも常にアンテナを高くしていたいですし、いろいろな方たちと交流して情報収集していきたいと思っています。この仕事、アイデア勝負ですからね。そういう意味でも、良い方々にご縁をいただき、ありがたいと思っています。

この大垣から、地域を、日本を変えていきたい。

田中:では最後に、何か目標というかビジョンとかはございますか?

正田:私はあくまでも中小企業の支援がゴールだとは思っていなくて、中小企業が活発になってこそ、そこから地域が良くなって日本の経済が良くなる、いわゆる良い国をつくっていくというところの一つの策として中小企業を支援していくのだと考えています。ガキビズをうまく利用していただき、私たちは考え方やノウハウをお伝えしますので、その中で事業者さんが自ら考える力を付けていただき、自走できるようにしていくことが大切だと考えています。そこで小さなイノベーションが生まれて、それを自分たちで動かしていけるようになっていけば、もっと地域が、日本が変わっていくと思います。それを解ってもらうのがガキビズとしての目標ですね。

田中:ありがとうございます。私も大垣の出身ですが、この大垣から新しいビジネスモデルが生まれ、日本を変えていくようなイノベーションが生まれることを期待しています。(了)

TOPIC

  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです
相談者としっかり対話することで
生まれる数々のサポート事例
来店客の平均滞在時間が3時間以上という、大垣市の老舗文房具店「川崎文具店」は、これからのビジネスモデルを模索されていたという。ガキビズは、その滞在時間に注目。長期滞在の裏には、店主が持つ豊富な商品知識と、それを活かした接客術があった。そこで、店主自身を『色彩の錬金術師「インクバロン」』とブランド化し、メディアへの露出を提案。結果として、全国からの問い合わせが増え、わざわざ店主に会いに来るコアなお客さんも。新たなファンを獲得することに成功している。

Company PROFILE

団体名 大垣ビジネスサポートセンター Gaki-Biz(ガキビズ)
URL http://www.gaki-biz.net/
センター長 正田 嗣文
所在地 〒503-0803 岐阜県大垣市小野4丁目35番地10
大垣市情報工房2階
設立 2018年7月4日(平成30年)
事業 中小企業支援、起業支援・サポート

Re:touch Point!

大垣から日本を変える。ガキビズならそれができると思わせる圧倒的なパッションを感じた。

Re:touch
エグゼクティブプロデューサー
田中 信康
予てから正田センター長のご活躍は耳にしており、この取材を通じてお会いできるのを楽しみにしていた。実際の正田さんは期待以上の魅力を持った方であり、崇高なビジョンを有した、まさに我々と思いを一つにできるパートナーだと確信した。正田さんのパッションに引っ張られるように、取材も実に熱のこもった内容となり、実に刺激的で楽しい時間であった。
ビズモデルを展開する自治体は全国にあれど、そのなかで「ガキビズ」は一際大きな成果を出し続けていることも頷ける。このようなエネルギーを持った方に出会えたことに感動すら覚えた。この出会いを実らせ、ぜひ協働を実現させたいものである。